2025.10.31
【省エネと快適性の両立】熱交換型換気が近年注目・推奨される理由
-現代の住宅における最大の熱損失源は『換気』。-
近年は住宅の高性能化が進んでいますが、せっかくコストをかけて高断熱・高気密化を図り魔法瓶のように熱を閉じ込めても、従来の換気方法では、冬は冷たい外気を、夏は熱い外気をそのまま室内に取り込んでしまいます。その結果、エアコンに大きな負担をかけることになっています。それを解決し、かつ室内環境含め住宅性能を最大限に引き出すのが、『熱交換型換気システム』です。給排気時に熱を回収して再利用するこのシステムは、光熱費の大幅削減と一年中安定した室内環境を実現します。本コラムでは、この熱交換型換気が、近年なぜこれほど注目され、推奨されているのか、その理由を詳しくご紹介していこうと思います。
『第一種』や『第三種』などの換気システムの特徴について
そもそも『第一種換気』『第二種換気』『第三種換気』などの換気方法の特徴についてはこちらのコラムで紹介しておりますので、併せてご覧ください。
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『第一種換気』の熱交換換気が注目される主な理由
省エネルギー効果と光熱費削減のメリット
熱交換型換気の最大のメリットは、「熱損失」を大幅に抑えられることです。
一つ目はエネルギーの再利用です。換気の際、夏であれば外の暖かい外気から熱と湿度を吸収し、冷えた新鮮な空気として室内に取り込みます。冬であれば、逆に冷えた外気を取り込む際に、室内の暖かい空気から熱と湿気を吸収し、暖かい新鮮な空気として取り込みます。熱交換を行うことにより給気時の温度が室内に近い温度となるため、室内の空気温度が一定に保たれます。その結果、エアコンが稼働する際に室温を維持するために必要なエネルギーを大幅に減らすことができるので、光熱費の節約に大きく貢献できます。
高気密高断熱住宅ならではの懸念点を補える
住宅が高気密高断熱化していくと、「隙間が少なく熱が逃げにくい優れた構造」にどんどんと進化していきます。その気密性の高さゆえに、計画的な換気がおろそかになってしまうと、いくら計算数値の良い住宅であっても実際には以下の問題を引き起こす可能性があります。
温度差や不快感の問題
「第三種換気」の場合、自然給気をそのまま取り込むため、特に給気口の周りは外気温の影響を強く受け、夏場や冬場など室内外の温度差が大きくなる時期は特に室内温度の均一化が崩れてしまいます。これではエアコンの稼働効率も下がってしまいますね。
結露・カビのリスク
高気密となると、計画換気がおろそかな場合、室内の空気循環に淀みが生じ、湿気の逃げ場がなくなるポイントができてしまいます。結果、室内で発生した水蒸気により壁内や窓に結露が発生しやすくなる可能性があります。
解決できるのが第一種換気設備(熱交換換気)
熱交換型換気システムは、給気・排気を機械で制御し、確実に空気を入れ替えますので、高い気密性がある住宅であって計画的な換気を実現します。さらに、熱交換時に湿度もコントロールできるため、結露を効果的に防ぎ、建物の長寿命化とカビの抑制にもつながります。
健康志向で高まる『空気質(IAQ)』問題へのアプローチ
高気密・高断熱化が進んだ住宅は、「暖かい・涼しい」という点はある程度解決しつつあります。今日では、室温の快適性だけではなくSDGsの健康志向の高まりとともに、『空気の質(IAQ:Indoor Air Quality)』を意識する方も増えてきました。「第一種換気」の熱交換型換気システムは、給気も機械的に行うため、外気を計画的に取り込みます。しかし、空気中には『花粉、PM2.5、ホコリ、外部からのウイルス』などが紛れており、同時に多くの汚染物質も取り込んでしまうのではないか。と、心配される方もいるでしょう。そこは安心していただいて大丈夫です。給気時に高性能フィルターを搭載できるものが多く、『花粉、PM2.5、ホコリ、外部からのウイルス』などの汚染物質の侵入を抑制しながら、新鮮な空気の取り込みが可能です。そのためアレルギーやシックハウス症候群の対策としても非常に有効であり、住まい手の健康を守る「バリア」機能も担っています。
従来の換気方法と比較するとデメリットも
初期投資やランニングコストがどうしてもかかってしまう
熱交換器を搭載した第一種換気システムは、排気ファンのみの第三種換気と比較すると、機器本体のコストが高くなります。また、複雑なダクト(換気経路の配管)工事が必要なケースが主なため、設置にかかる費用(イニシャルコスト)が大幅に高くなります。また、「熱交換素子(熱交換換気を行う仕組)」の交換費用やダクト・給排気口のフィルター清掃・交換などの維持費(ランニングコスト)もかかってしまう点は予め承知する必要があります。
例:夏場も同様
設置場所や断熱仕様にも注意
第一種換気の熱交換機器の本体は比較的に大きいため、小屋裏や天井裏・点検口スペースなどにスペースを確保する必要があります。そのため、天井断熱ではなく、屋根断熱の採用が要求されるケースが一般的となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?従来採用されてきた『第三種換気』による換気システムと比較すると熱交換型換気システムの導入には、初期費用の追加や間取り・スペースの要求など、どうしても追加する部分があります。ただ、「冷暖房負荷を大幅に抑えることによる長期的な光熱費の削減効果」「温度差のない快適で健康的な暮らし」「気密性に優れた住宅ならではの懸念点の解消」などとメリットを考慮すれば、検討する価値は非常に高いものだと考えます。昨今は、ZEH含む高性能住宅がある程度標準化され、断熱性能(UA値)の高水準化ではあまり差別化されなくなってきています。(一つの指標として、建設地域よってUA値はある程度の水準確保で良いのではないかともされています※)住宅を選ぶ際には、「断熱性」や「耐震性」はよく言われてきたポイントですが、「換気システム」が家の性能(断熱性能や省エネ設備)と暮らしの快適性(室内温度や空気質(IAQ))を最大限に引き出せるものになっているのか。熱交換型換気システムの有無を、新たな視点として追加してみてはいかがでしょうか。
※UA値の参考指標として:HEAT20【地域補正係数】(https://newsroom.lixil.com/ja/2024030102)
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いえすたいる編集部
KAKUTO
最近は「洋服(特に裏原系)」と「kpop」にハマっています! 息抜きにする「読書(主にミステリ小説)」もちょっとしたマイブームです。 これから家を建てる皆様へ、少しでもお役に立てる情報発信を 私自身も日々勉強しながら更新してます!