2025.07.07
【茨城・新築住宅】家をシロアリから守る『防蟻』処理とは?理由や対策についてわかりやすく解説します。
地震大国といわれる日本において、家屋の「耐震性能」は場合によっては「省エネ性能」よりも優先順位の高いポイントでさえあるといっても過言ではないでしょう。そのくらい「耐震性能」は重要なポイントです。そんな地震大国日本において重要な耐震性能を脅かす存在なのが「シロアリ被害」になります。なぜ日本ではシロアリ被害が多いのか。『耐震性能を守ること』以外にもシロアリ対策を施すことによるメリットには何があるのか?どんな対策方法があるのか?などについて今回のコラムでまとめていこうと思います。
約5軒に1軒はシロアリ被害があると言われ、全国のシロアリ被害件数は年間200万件を超えているとも
なぜ日本ではシロアリ被害が多いのか
日本の気候とシロアリの生態との相性が非常に良い
日本の気候の特徴として挙げられるのは「高温多湿」であることです。近年はとくに夏場は夜間であっても30度近い熱帯夜であることが多く、一日を通して「高温多湿」な環境です。そして、シロアリは湿度が高いジメジメした環境を好む虫。またシロアリの好物は植物の細胞壁の主成分である「セルロース」です。その為、住宅の柱、土台、梁、根太、床板などの構造材、家具、建具、特に柔らかい木材や湿った木材などをどんどん食べて繁殖していきます。木造住宅の床下は、換気が弱くジメッとした環境の為、シロアリにはこの上ない環境という事ですね。また、高低差がある土地で水たまりが発生しやすい立地の場合は、更にシロアリ被害のリスクを高めてしまう危険があります。
木造住宅であれば「防蟻処理」は建築法で義務化されている
防蟻処理=シロアリ被害を予防する効果のある認定薬剤を散布して措置を行います。建築基準法では、木造建築の地面から1メートル以内の部分(柱、筋交い・土台など)にはこのような防蟻処理をおこなうことが義務付けられています。
シロアリ対策の必要性
日本においてシロアリ被害が多い理由が分かったところで、具体的に防蟻処理をする必要性についてまとめていきます。
柱・梁・土台など構造躯体への被害
シロアリ被害にあった様子
住宅の柱、土台、梁、根太、床板などの構造材がやられてしまうと、当たり前ですが建物の強度が低下します。早期に発見できれば被害も最小で済ませることも可能ですが、最悪の場合、倒壊してしまう。そんなリスクが高まります。特に地震が多い日本において、構造躯体の耐震性能の維持は非常に重要な点です。
シロアリ被害の規模次第では修繕費が高くついてしまう
床下の土台や柱などの主要構造部分を修繕するとなると、そのシロアリ被害の規模や被害の深刻度などによりますが高額な工事費がかかってしまう可能性が高いです。その為、日頃からの予防(水漏れや雨漏り・風通しを良くする等)と早期発見(業者による定期点検が理想※工務店など)が重要です。
長期優良住宅なら劣化対策・維持保全も安心
「認定長期優良住宅」であれば防蟻対策はもちろんのこと、劣化対策等級3、維持保全計画(定期点検の期間設定)などの基準がある為、一般的な住宅よりも維持管理に長けている住宅です。認定費用や耐震等級・省エネ性能など一般的な住宅と比較すると追加要素があるので、併せてこちらのコラムもご覧ください。
【長期優良住宅とは?】住宅ローン減税等のメリットをわかりやすく解説。
シロアリ対策で薬剤を使用する際の注意点~建築基準法~
使用禁止薬剤について
防虫や防蟻に使用される有機リン系薬剤の『クロルデン』『クロルピリホス』は、土台等に塗布したものが発散し、その空気が居室内に流入して、シックハウス症候群(※)を引き起こす可能性があることから、平成15年7月1日に改正された建築基準法以降、住宅の建築材料には使用できなくなっています。
※シックハウス症候群は、建材や家具などから発生する化学物質が原因(ほかにダニやカビも原因)で、居住者に様々な健康被害を引き起こす状態を指します。新築やリフォーム後の住宅で特に注意が必要で、症状としては、目がチカチカする、喉の痛み、めまい、吐き気、頭痛など主に神経系の症状が挙げられています。
土壌処理
シロアリ防除のために地面を薬剤で処理することを「土壌処理」といいます。建物によっては有効な防蟻措置なのですが、判断を誤ってしまうと、薬剤によって井戸水や地下水の汚染を引き起こす可能性があります。土壌処理を行う場合は、事前に敷地及び周辺の状況や土質などを調査したうえで、適切な判断をしましょう。また、処理薬剤の選択、処理方法を決定し、水質汚染につながらない様、慎重な判断が必要です。
シロアリ対策の工法例(新築)
国内のスタンダード工法(薬剤工法)
現在、日本で仕様される防腐防蟻処理は有機系の薬剤散布が主流になっています。ただ注意点があり、現在建築基準法で認可されている薬剤はどれも、効果持続年数が「最大で5年間」「5年を目途に再処理の必要あり」といった風に、住宅を長く良い状態で維持していくうえではあまりにも短い効果期間なのです。その為、再処理をしない場合は新築6年目以降はシロアリ対策が無防備状態になっているケースがほとんどです。また、再処理を行おうとしても、断熱材のある壁内部の処理は到底難しく、床下等、施工が現実的に可能な範囲になっている事が事実です。ちなみに上記で使用禁止剤と紹介した「クロルピリホス」「クロルデン」といった薬剤は、神経毒性の農薬系有機薬剤ですが、いずれも「効果5年以上」「効果30年以上」と、効果が長期間持続する薬剤ではありました。
加圧(注入)工法
加圧注入工法は、木材保存処理の一種で、木材を大きな釜に入れ、高圧をかけて薬剤を内部まで浸透させる方法です。この工法は、特にシロアリや腐朽菌による被害を防ぐために、木材の耐久性を高めるために用いられます。加圧注入を行うことで、表面処理よりも薬剤がより深くまで浸透するため、長期間保護が期待できる点が大きなメリットです。推奨される場所として、特にシロアリ被害がある土台や大引、他には外構材やウッドデッキなどの屋外で使用する木材にもより効果を発揮する工法になるでしょう。
床下換気・通気工法
続いての工法は、基礎パッキンを用いた床下換気を行い、シロアリが好む湿気を取り除く工法です。床下の換気を適切に行うこと防蟻処理の効果を高めることができますが、シロアリ予防に直接的な効果はないとされています。というもは、基礎パッキンを用いている理由が「シロアリ対策として」ではないからです。基礎内(床下内)の通気(換気)効果の向上、基礎と土台(コンクリートと木材)の切り離しなどを主な目的としている為、付随的な効果がある可能性がありますが、直接的にシロアリ対策としての工法とはいいがたいですね。
ベイト工法
ベイト工法は、シロアリ駆除のために、シロアリが好む餌に脱皮阻害剤を混ぜたベイト剤を使い、巣ごとシロアリを駆除する方法。この工法は、薬剤工法や加圧注入工法などのように薬剤を散布・塗布するのではなく、ベイト剤を巣に持ち帰らせることで、シロアリを間接的に駆除するため、人やペットへの影響が少なく安全性が高いのが特徴です。しかし即効性がない点や費用が多くかかってしまう点、細かく点検が必要な点などはデメリットとも言えるでしょう。
※脱皮阻害剤・・・昆虫の脱皮を阻害する作用を持つ殺虫剤の一種
まとめ
今回はシロアリ対策についてまとめてみました。さまざまな対策が施されている中、最もスタンダードな工法である薬剤工法ではもって「5年間」と短い点は、あまり知られていない事実かもしれません。建築基準法において防蟻処理は必須となっておりますが、ポイントになるのは「5年目以降」の点検や再対策ではないでしょうか?シロアリの習性にマッチするような土地に建設される場合は、シロアリ対策には特に注意が必要ではないかと思います。次回のコラムではおすすめの対策についてまとめてみようと思います。

いえすたいる編集部
KAKUTO
最近は「洋服(特に裏原系)」と「kpop」にハマっています! 息抜きにする「読書(主にミステリ小説)」もちょっとしたマイブームです。 これから家を建てる皆様へ、少しでもお役に立てる情報発信を 私自身も日々勉強しながら更新してます!