2021.12.27
「脱炭素社会」で推進される「認定低炭素住宅」とは?
2020年以降、一度は聞いたことのある「カーボンニュートラル」「脱炭素社会」。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にする施策です。2020年10月に当時の菅義偉首相が「日本では2050年を目途に、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という脱炭素社会への所信表明をしたことも記憶に新しいのではないでしょうか。さて、世界的に「脱炭素」が注目される中、「住宅」でも「低炭素住宅」が注目されています。聞いたことのある方もいるかもしれませんが、どんな住宅なのか、認定基準はどうか、どんなメリットがあるのかなど、ご紹介できればと思います。
認定低炭素住宅とは?
「低炭素住宅」とは、簡単に言うとそのまま、「二酸化炭素の排出量を抑えたエコな住宅」ということです。
当時の東日本大震災等の自然災害の猛威から、自然エネルギーの本格活用や地球温暖化による自然災害の被害拡大を考え、特に人口が集中している都市を中心に、住宅(家庭生活)の低炭素化を推進する為、「都市の低炭素化の促進に関する法律」(エコまち法)が平成24年12月に施行され、始動しました。
なぜ住宅にも脱炭素のテコ入れをするかというと、日本の二酸化炭素の排出量のうち、約3分の1は「住宅を含んだ建築物」から排出されているという結果が出ているからなのです。そしてそのうちの5割は「都市」からの排出となっているのです。こうした観点から「エコまち法」に基づく「低炭素建築物認定制度」が始まりました。
「低炭素住宅」と認定されるためには?
簡単に「二酸化炭素の排出量を抑えたエコな住宅」とはいうものの、「低炭素住宅」と認定されるためには基準があります。その基準をクリアした物件が「認定低炭素住宅」となるわけです。
実際に設けられている基準に「定量的評価項目」と「選択的項目」があります。
「定量的評価項目」は必須であり、「選択的項目」は8種のうち2種以上を講じる必要があります。
定量的評価項目(外皮性能と一次エネルギー消費量)
選択的項目(8種のうち2種以上を講じる必要あり)
2022年10月より認定基準改正へ~「太陽光発電設備」は選択から要件に~
現行基準である「断熱等性能等級4(水戸市の場合は5地域:Ua値0.87以下)以上。かつ、一次エネルギー消費量等級5(10%以上削減)を講じること。」で認定が下りるのは2022年9月末までの予定。2022年10月以降は『ZEH水準』と称される「断熱等性能等級5(水戸市の場合は5地域:Ua値0.60以下)」かつ「一次エネ等級6(20%以上の一次エネルギー消費量削減)」が必要に。詳細は下記コラムをご参照ください。
【省エネ住宅/ZEH水準】2022年10月より認定水準引き上げ改正に!~長期優良住宅・認定低炭素住宅・ZEH(ゼロエネ)はどれを選択すべき?~
ZEH水準にすることで一次エネルギー消費量(BEI)を20%以上削減し、かつ、太陽光発電(創エネ)を搭載し、BEIと併せて合計50%以上のエネルギー消費量を実現する必要があります。
「認定低炭素住宅」のメリット・デメリット
【メリット】税制優遇や低金利ローンの対象になる
認定低炭素住宅を建てると、税制優遇や低金利ローン(フラット35Sの「Aプラン」)が組めるなど、お得になる場面があります。これは同じ認定住宅の「長期優良住宅」も該当します。(併せて、長期優良住宅では「固定資産税の減額措置期間」が延長できます。)
「長期優良住宅」との比較
税制優遇面では、共通点が多いですが、「長期優良住宅」は、認定されるための条件が「認定低炭素住宅」に比べると項目が多く、コスト面でも違いが見られます。逆に言えば、優遇される住宅を建てる為の認定基準のハードルが低いのが「認定低炭素住宅」というわけです。
「長期優良住宅とは何か?」「認定の基準の差は何?」など、気になる方も含め、以前にご紹介しました「長期優良住宅」関連のコラムを是非、ご参照ください。
『認定長期優良住宅』とはどんな住宅?認定基準は?条件は?
なぜ長期優良住宅がいいの?性能基準の改正?メリットはあるけどデメリットは?
住宅ローンでおなじみの「フラット35」 メリット・デメリットを解説します!
【デメリット①】市街化区域内でないと建築できない
「認定低炭素住宅」は、都市の低炭素の促進に関する法律第7条に規定されている区域で、市街化区域(区域区分に関する都市計画が定められていない場合は、用途地域が定められている区域)内のみで建築が可能です。区域外では認定申請ができないので注意が必要ですね。先ほど比較をしました「長期優良住宅」には、建設地に縛りはありません
市街化区域の反対で「市街化調整区域」がある
「市街化区域」と似た用語で「市街化調整区域」があります。市街化区域とは反対の意味で「市街化を抑制すべき区域」となります。開発行為や施設の整備を極力行わない地域に指定されているので市街化調整器地域では住宅の建築に当然制限がかかります。似た用語なので土地探しの際は注意が必要です。
都市計画税がかかる
市街化区域内に住宅を建てると「都市計画税」が毎年課税される点も把握しておきましょう。固定資産税と併せて課税され、「課税標準額(固定資産税評価額)×0.3%」で計算されます。住宅の場合、課税標準額を「基準値を3分の1~3分の2」とする軽減措置があります。
【デメリット②】認定申請にお金がかかるほか、必ず着工前に行う必要があるため、着工のタイミングに注意
こちらは「長期優良住宅」も該当します。認定申請には手数料がかかるほか、着工前に認定申請を行う必要があるため、着工までにおおよそでも1カ月ほどの申請期間を待つ必要があります。工期には特に注意ですね。
地域型住宅グリーン化事業での補助金があります
「認定低炭素住宅は、「地域型住宅グリーン化事業」の補助金の対象です。令和3年度の当事業では「高度省エネ型」というタイプで分類され、補助金は最大で100万円を申請<※1>できます。
補助金を加味して住宅を検討される場合、グリーン化を活用できる工務店でマイホームを建てる必要がありますので注意してくださいね。
<※1>ちなみに長期優良住宅とゼロエネ住宅に関しては同年度の事業で最大190万円の補助金が申請できます。
地域型住宅グリーン化事業についてさらに知りたい場合は、併せてこちらのコラムもご参照ください。
光熱費0になるZEH(ゼッチ)にするには?Vol.2 補助金の種類やもらい方
【住宅/省エネ/補助金】地域型住宅グリーン化事業とは?対象となる工務店は?どんな家が条件?
【2022年/住宅/補助金】令和4年度地域型住宅グリーン化事業 Vol.1 最大補助金190万円に!
※令和3年度補正予算の閣議決定を受け、「こどもみらい住宅支援事業」が新設されました。建築主が39歳以下である場合、もしくは18歳以下の子供と同居している場合に限り、最大100万円の補助を受けることができます。
【R4年補助金/最大100万円】 こどもみらい住宅支援事業 Vol.1 ~3つのポイント~
まとめ
今回紹介しました「認定低炭素住宅」の他にも、「長期優良住宅」や「ZEH(ゼロエネルギー住宅)」など、省エネ住宅にも様々な種類や基準があります。住宅を建てられる際の一つの検討項目として知っていただけたら幸いです。併せて補助金を活用することでコストを抑えることも可能です。近年の自然災害の被害拡大をみると一目瞭然ですが、「2050年脱炭素化」に向けて、太陽光発電の標準搭載であったり、省エネ性能の強化であったりと、今後ますます動きがあるでしょう。「次世代の省エネ住宅」はコスト増加がどうしても懸念されますが、日本の現状の省エネ住宅性能基準は、世界先進国の中では最低ランクの基準です。電気代やガス代の高騰する現代の生活、ランニングコストの観点はもちろん、「地球環境」の観点からも、少なくとも「日本の省エネ基準値のクリア」は是非とも考えてみてください。
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いえすたいる編集部
KAKUTO
最近は「洋服(特に裏原系)」と「kpop」にハマっています! 息抜きにする「読書(主にミステリ小説)」もちょっとしたマイブームです。 これから家を建てる皆様へ、少しでもお役に立てる情報発信を 私自身も日々勉強しながら更新してます!